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差止仮処分命令申立事件

明野村廃棄物最終処分場差止仮処分命令申立事件について

 平成12年12月8日、明野村の住民ら1407名が、山梨県及び(財)山梨県環境整備事業団に対し、明野廃棄物最終処分場(仮称)の差止の仮処分命令を求める申立を甲府地方裁判所に行いました。

申立の内容

 廃棄物最終処分場建設のための測量をはじめとする廃棄物最終処分場の建設行為に着手遂行することとなる一切の行為をしてはならない。

裁判の経緯

  • H12.12.8 住民らが処分場建設差止仮処分の申立を甲府地裁に行う。
    ↓ 1年4ヶ月の間に計8回の審尋による審理が行われる。
  • H14.3.29 甲府地方裁判所が決定を行う。
    H22.1.26廃棄物最終処分場建設禁止仮処分命令申立事件に係る決定H18.10月に反対派住民1,466名により甲府地裁に提出された事件について、甲府地裁から「申立てを却下」する決定

決定の内容(主文)

  • 債権者らの申立てをいずれも却下する。
  • 申立費用は債権者らの負担とする。

※債権者とは、仮処分命令を申し立てた者を言います。本件の場合は、明野村の住民ら1407名の人達です。
これに対し、訴えられた方を債務者と言います。本件の場合は、山梨県及び(財)山梨県環境整備事業団です。

主な争点と裁判所の判断について

1 処分場に埋め立てられる廃棄物の危険性について

 重金属類は、一定量を超えて摂取すると、発ガン性、催奇形性など人体への影響があるが、重金属類が果たして、また、どのように無害化するかどうかについては明らかではない。

 ダイオキシン類は、体内に長期間蓄積されるため、一度に大量に摂取しても、ごく微量を長期間に摂取しても、人体に重大な影響を及ぼすおそれがあるが、ダイオキシン類が果たして、また、どのように無害化するかどうかについては明らかではない。

 環境ホルモンについては、その毒性が指摘されているものの、そのメカニズムが必ずしも明らかになっておらず、調査・研究段階である。

2 施設の安全性について

 浸出水中に受入廃棄物から重金属類、ダイオキシン類等が溶出する可能性は否定できず、処分場の建設・操業により、受入廃棄物中の有害物質が処分場外に出て地下水・河川・大気を汚染し、債権者らがこれを摂取するなどし、その結果、債権者らの生命及び身体の安全・健康を害するような具体的危険があるかどうかという観点から、本件処分場の安全性を検討する必要がある。

(1)遮水工

遮水シートについて

 債権者らは遮水シートの耐用年数は、現実の自然環境のもとでは、紫外線、熱、微生物等による劣化や、添加剤の溶出による劣化により、人工の環境のもとでなされた耐久試験の結果よりも非常に短くなるべきであり、遮水シートが50年以上の耐久性があるとすることができないと主張するが、これを疎明するに足りる証拠はない。
 孔穴による遮水シートの破損及び有機化学物質の分子拡散浸透による遮水シート通過の可能性は一応認めることができる。
 その他遮水シート破損の可能性があるというためには、その特性を踏まえた設計許容強度が不十分であることの疎明が必要であるが、これを疎明するに足りる証拠はない。
 債権者らは、接合部のはがれによる漏水は避けられないこと、下地地盤の整地不良や突起物による破損の危険があること、また、自己修復型粘着シートは、ピンホール程度の穴にしか対応できず、ある程度以上の大きな亀裂を修復する能力はないことなどを主張するが、これを疎明するに足りる証拠はなく、債権者らの主張は採用できない。

浸出水集排水管について

 債権者らは、20mという広い間隔の集排水管であり、その効果は疑問であると主張し、また、保護土などの影響で目詰まりの問題は不可避であると主張するが、その主張は一般論にとどまる。
 底部集排水管は、配置間隔を概ね20m程度とするのが望ましいとされていること、債務者事業団は、浸出水集排水管の集水機能確保等のため被覆材を設置し、目詰まり防止対策をとっていることが一応認められる。

地下水集排水管について

 債権者らは、浅層地下水が処分場予定地に伏在することから、地下水集排水管の処理能力を超えると主張するが、地下水集排水管の処理能力は、幹線は想定地下水量の約250倍、枝線は約20倍の通水能力を持つように設計されていることが認められ、債務者事業団は、浸出水集排水管と同様の目詰まり防止対策をとることが認められ、債権者らの主張は採用できない。

電気的漏水検知システムについて

 債権者らは、電気的漏水検知システムの腐食による断線の可能性を主張するが、劣化調査の結果、通常考えられる設置状況において耐久性に問題はないとの結論が出ているから、この主張は採用できない。
 その他の同システムの性能に関する債権者らの主張については、これを裏付ける具体的証拠はない。

遮水工のまとめについて

 以上によれば、遮水シートについては、孔穴及び有機化学物質の浸透の可能性があることが一応認められるが、他方、本件処分場の遮水構造は、遮水シートのみで構成されるのではなく、底面部は、保護土、上層不織布、上層遮水シート、下層不織布、下層遮水シート、ベントナイト混合土層により構成され、法面部は、保護土、上層不織布、上層遮水シート、自己修復性シート、中層不織布、下層遮水シート、下層不織布により構成され、さらに、浸出水排水管、地下水集排水管、電気的漏水検知システム等が設置され、共同命令の規制や基準に適合し、かつそれを超える多重の安全対策をとっており、上記可能性があるとしても、それが多重遮水構造全体の安全性を損なうおそれがあるとまでは認めることができない。
 債権者らは、法令上の規制や基準に適合しているからといって安全性が確保されているわけではないと主張するが、安全性の判断に当たり、本件処分場の計画内容が法令上の規制や基準に適合していることは、安全性確保の上で有力な判断基準となるというべきである。
 もっとも、多重遮水構造全体が常に万能であるとまではいうことができないから、債務者事業団は、本件処分場の建設・操業に当たり、個々の場面における対応について万全を期する必要がある。

(2)浸出水処理施設について

 浸出水処理施設は、二段階の凝集沈殿処理と生物処理、砂ろ過処理、活性炭吸着処理、キレート吸着処理を組み合わせ、さらに平成11年10月の見直しにより、ダイオキシン類等の微量有害物質を除去するため、微量有害物質分解除去装置を設置することとされ、個々の処理過程における処理の目的・処理対象物質は異なることが認められる。
 浸出水処理施設の欠陥があるというためには、個々の処理過程において処理の目的を達成できない問題点があることの主張及び疎明が必要であるが、そのような債権者らの主張及び疎明はない。

(3)大気汚染について

発生ガスについて

 債権者らは、メタンガス等が大気中に拡散する可能性があると主張するが、本件処分場は、廃棄物を埋め立てることにより生じるメタンガス等の発生量を減少させるため、準好気性埋立構造を採用し、発生ガスによる大気汚染対策を行っており、債権者らの主張は採用できない。

焼却灰の飛散について

 債権者らは、焼却灰に含まれる高濃度のダイオキシン類と重金属類が、大気中に浮遊、飛散する可能性があると主張するが、債務者事業団が主張する飛散防止対策は、廃棄物処理法施行令に基づく飛散等の防止措置に沿うものである。
 債務者事業団のダイオキシン類対策のための飛散防止対策は、今後具体化すべきものがあるとしても、計画段階のものとしては十分なものということができ、債権者らが指摘する債務者事業団の飛散対策の問題点については、今後、債務者事業団による具体化をまつべきものである。

(4)立地条件について

 立地条件については、産業廃棄物処理施設の設置許可の要件ではないが、地盤や利水状況など立地条件の関係で不都合が認められれば、一定の因果関係の下に処分場の建設・操業による人格権侵害の具体的危険性が認められることになるため、その検討を行う。

法面の不等沈下について

 凝灰質粘性土~細砂層(Kf層)が必ずしも均一な粒度分布を持つ層とはいえないため不均質な部分が法面部に露出した場所で不等沈下が発生する可能性を指摘できなくはないが、直ちに遮水シートないし遮水工を破損する可能性につながるものともいえない。

焼却灰の飛散について

 債権者らは、焼却灰に含まれる高濃度のダイオキシン類と重金属類が、大気中に浮遊、飛散する可能性があると主張するが、債務者事業団が主張する飛散防止対策は、廃棄物処理法施行令に基づく飛散等の防止措置に沿うものである。
 債務者事業団のダイオキシン類対策のための飛散防止対策は、今後具体化すべきものがあるとしても、計画段階のものとしては十分なものということができ、債権者らが指摘する債務者事業団の飛散対策の問題点については、今後、債務者事業団による具体化をまつべきものである。

底面の不等沈下について

 債務者事業団は、底面部の設計支持力に満たない基礎地盤については、造成工事による埋立地底面部の基礎地盤を露出させた時に、検査を行い支持力を確認し、部分的に設計支持力に満たない箇所は置換工法等により地盤改良を行うとしていることが認められ、不等沈下が生じる可能性があるということはできない。

断層について

 債権者らは、処分場予定地の北東側約750mの地点の地下には、塩川断層が伏在し、第四紀に活動した断層であり、最近の地質時代に繰り返し活動しており、活断層である可能性が極めて高いと主張するが、信州大学小坂教授の意見書は、塩川断層が、活断層であることを事実として述べているわけでも、塩川断層が、活動度が大きく、本件処分場至近まで延びていることを事実として述べているわけでもない。
 塩川断層が本件処分場予定地付近まで存在するとしても(基本設計書によれば、地表踏査、ボーリング調査などの結果では、付近には明瞭な断層は認められなかったとされる。)、塩川断層が活断層である可能性が極めて高いという点の疎明はなく、塩川断層の存在自体が、本件処分場の安全性を損なうとの疎明もない。

地盤の透水性について

 処分場基盤直下の一部は透水性のある地層であることが認められるが、債務者事業団は、処分場の基盤から地下50mまでは難透水性の地層が連続していることを確認したことが一応認められる。
 不透水性地層の有無は遮水工設計における重要となる要素となっているものの、不透水性地層がない場合に産業廃棄物の最終処分場の建設が許されないわけではなく、債務者事業団は、遮水工を設け、浸出水が地下に浸透するのを防ぐこととしていることから、遮水工等の遮水構造の欠陥についての疎明でもない限り、透水性の故に浸出水の地下への浸透などの可能性の疎明があるということはできない。

雨水流域面積について

 債権者らは、雨水流域面積・降雨量算出や地下水位調査については不備があり、雨水集排水施設や地下水集排水施設、防災調整池等の基本的容量、構造等に悪影響を及ぼすと主張するが、債務者事業団は、今後、支流の水系からの雨水が本件処分場に流入する危険を想定して、雨水集排水施設や防災調整池等の詳細設計に着手する前に、雨水集水域を確定する予定であること、地下水集排水管の幹線は想定地下水量の約250倍、枝線は約20倍の通水能力を持つように設計されていることが認められる。
 債務者事業団は、雨水流域面積、降雨量を算出し、地下水量・地下水位を調査・想定したうえ、これらからの悪影響を受けないような雨水集排水施設・地下水集排水施設・防災施設さらには浸出水処理施設を設計・敷設するものということができる。

地下水について

 債権者らは、処分場予定地は、谷を挟んで右岸と左岸とでは地質が大きく異なっており、予定地は、浅尾地域の地下水の涵養域になっているため、遮水工が破損して浸出水により浅尾地域の地下水を汚染すると主張するが、熊井意見書は本件処分場予定地の基礎基盤と表層の地質を区別して論じているのか必ずしも明らかではない。
 本件処分場は、表層を取り除いて礫混じり凝灰質層を支持基盤とするため、表層地質の相違によって地下水が処分場にどのような影響を及ぼすかどうかについての債権者らの疎明はない。
 さらに、最終処分場の技術上の基準として、地下水により遮水工が損傷するおそれがある場合には、地下水を有効に集め、排出することができる堅固で耐久性を有する管渠その他の集排水設備を設けることとされており、地下水集排水管・施設の欠陥についての疎明でもない限り、地下水の影響による遮水工損傷等の可能性の疎明があるということはできない。

土石流危険渓流について

 本件処分場予定地は、土石流が発生した場合、土砂の氾濫が予想されているものではなく、防災ダムや防災調整池などの防災対策を前提とすると、土石流危険渓流の指定地であるからといって、本件処分場について直ちに立地条件に係る危険性があるということはできない。

3 自然環境への影響と環境保全対策

 債権者らは、処分場建設は生態系を崩し里山環境を破壊し、植物、小動物などの生育環境を失わせると同時に、猛禽類にとっては安定的な餌場を失わせ、絶滅の危険が増大している野生動物の稀少種であるオオタカなどを、まさに絶滅の危険にさらすことになると主張するが、その主張は一般論の域を出ていない。

 債務者事業団は、環境保全対策に関する個別具体的な内容について、今後の詳細設計や事業実施時点での状況を踏まえて、適時、適切な対策を講じる意向である。

 オオタカについては、生態調査が行われ、債務者らは、処分場予定地の隣接地に営巣が確認されたからといっても、生息環境の地域特性や個体特性を考慮しながら、選択性のある対応策が可能であり、オオタカの保護を図るため、専門家から提言を受けた保護策についても検討を進め、詳細設計に反映していくことを表明したことが一応認められる。

以上に照らせば、債務者らは、今後も環境影響調査及び環境保全対策を実施するものと考えられる。

4 予定地選定の経緯

 債権者らは、本件処分場予定地だけが県から提案されたのか明らかでなく、また、本件処分場予定地を候補地とするに当たり、債務者県において安全面での検討が十分になされた形跡がほとんどみられないと主張しているが、本件全証拠を精査しても、債務者県が本件処分場予定地を候補地とするに当たり、安全面においてどのような調査検討を具体的に行ったかどうかについては、不明というほかない。

 債務者らは、峡北地区整備検討委員会において、明野村小笠原地内、小淵沢町及び高根町の3候補地に絞り込まれたが、いずれの候補地も種々の困難な問題があったため、より最適な候補地を探す必要が生じたことについては具体的に主張するが、本件処分場予定地を候補地として選定したことについては、峡北地区以外の候補地も含め、独自に航空写真をもとに最終処分場になりうる場所を調べ、地質の専門家等による現地調査も行い、その結果、モデル施設としての要件に合う候補地として、本件処分場予定地である明野村浅尾地内が浮上したと主張し、その点の説明をしたことを裏付ける証拠はあるが、その具体的調査内容等を客観的に裏付ける証拠はない。

5 住民に対する説明について

 債権者らは、債務者らはダイオキシン問題等について十分な説明がなかった旨主張するが、債務者県が平成6年6月ころ、地元説明会等を実施した際には、ダイオキシン類については問題となっておらず、ダイオキシン類が社会問題として取り上げられ、その結果、平成11年10月、本件処分場の計画が見直され、放流水に含まれるダイオキシンの量を0.1ピコグラムまで抑えることとされ、浸出水処理施設、受入廃棄物である焼却灰についてのダイオキシン対策が決定されたこと、債務者県は、座談会等において説明を行ったことが認められる。

6 施設の公共性について

 全国的に廃棄物処理施設の設置や運営をめぐり反対運動が多発し、その確保が困難となり、廃棄物の適正処理に支障を生じかねない状況があったことを踏まえて、平成9年には、施設の設置許可手続において、生活環境影響調査の実施、申請書等の告示・縦覧、関係市町村長・関係住民の意見聴取など許可手続を明確化するとともに、許可要件として、周辺地域の生活環境の保全に適正な配慮がなされたものであることが追加された。

 しかし、状況は改善されず、かえって全国的に深刻化したため、廃棄物について適正な処理体制を整備し、不適正処分を防止するため、平成12年には、国における基本方針の策定、公共関与の仕組みである廃棄物処理センターにおける廃棄物の処理の推進、等の改正が行われた。

 山梨県内においても全国的状況と同様の問題が生じていることが認められ、以上に照らすと、山梨県内に本件処分場を確保することについては、公共性ないし、公益上の必要性があるということができる。

 廃棄物処理法の平成12年改正は、循環型社会形成推進基本法等の循環型諸立法整備の一環であり、各地で循環型社会実現へ向けての取組みがなされていることが認められるが、債務者県においても、循環型社会への転換を目指し、一般廃棄物及び産業廃棄物の廃棄物全般にわたり、選別リサイクル施設やガス化溶融施設を中核とする再資源化システムの具体化などを進めていることが一応認められるものの、現段階において、前記の公共性ないし公益上の必要性を否定することはできない。

7 裁判所のまとめについて

 債権者らは、債務者らはダイオキシン問題等について十分な説明がなかった旨主張するが、債務者県が平成6年6月ころ、地元説明会等を実施した際には、ダイオキシン類については問題となっておらず、ダイオキシン類が社会問題として取り上げられ、その結果、平成11年10月、本件処分場の計画が見直され、放流水に含まれるダイオキシンの量を0.1ピコグラムまで抑えることとされ、浸出水処理施設、受入廃棄物である焼却灰についてのダイオキシン対策が決定されたこと、債務者県は、座談会等において説明を行ったことが認められる。

 以上に検討したところによれば、本件処分場の建設・操業に伴う有害物質等の溶出の可能性があるとしても、遮水工の破損による地下水汚染、浸出水処理施設の欠陥による河川汚染、発生ガスやダイオキシン類等を含む焼却灰の飛散による大気汚染等の可能性及び立地条件の不具合等を認めることは困難であり、したがって、これらにより債権者らの生命及び身体の安全・健康が侵害される具体的危険があるということはできない。

 もっとも、人格権の内容として保護されるべき利益は、生命及び身体の安全・健康に限られるものではなく、健康被害に至らない一定の生活利益もこれに含まれるというべきであり、これら債権者らの主張する平穏生活権ともいうべきものも、人格権の内容として保護されるものと解するのが相当である。

 債務者県が、本件処分場予定地を候補地として選定するに当たり行った調査等の具体的内容を明らかにしなかったこと、「条件付き賛成」や本件確認書をめぐる手続的問題点についての対応に時間がかかったことなどから、債権者らが債務者らに対して強い不信感を抱き、この不信感が、本件処分場の建設・操業に伴って債権者らの生活利益が侵害されるのではないかという強い不安感を生じさせたことがうかがわれ、他の産業廃棄物処分場をめぐるダイオキシン類等の問題等がかつて社会問題化したことと併せ考えると、現段階においても、通常人の感覚に照らして安心して飲用水及び生活用水を利用できる利益が侵害される具体的危険があるといえなくはない。

 しかしながら、侵害される危険のある利益が生活利益に止まる以上、その具体的危険があるからとといって直ちに受忍限度を超える人格権侵害のおそれがあるということはできず、

  • 公共関与による本件処分場の建設・操業が、県内における廃棄物の処理体制を整備し、不法投棄や不適正処分の増発を抑制するという公共性ないし公益上の必要性を有すると認められること。
  • 債務者らは、明野村との具体的な協議がまとまったわけではないものの、将来、本件処分場の建設・操業により水源井戸が浸出水に汚染されるおそれが判明した場合の代替水源の確保を申し出ていること。
  • 環境影響調査は既に実施されている上、今後、詳細設計や設置許可申請手続において、本件仮処分の審尋の過程で明らかとなった問題点を検討する用意があるとしていること。
  • 今後、債務者事業団が本件処分場の設置許可を申請する場合、その手続の中で住民らの意見が反映される機会があること。
  • 債務者県は、現在、循環型社会にむけて再資源化システムと連動した廃棄物処理政策を目指していること。

 などの諸事情を総合考慮すると、現段階において、かかる利益が侵害される危険があるからといって、債権者らについて、受忍限度を超える人格権侵害のおそれがあるとまではいうことができない。

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